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2019-04

RAV4はメカニズムも衝撃的

復活したRAV4は、260万円からというお手頃価格のみならずメカニズムも興味深い。
「ダイナミックトルクベクタリングAWD」という4WDシステムは、FF走行時はプロペラシャフトを駆動系から完全に切り離してしまえるという。
更にプロペラシャフト後端のリアのトランスファー左右に設置した電子制御カップリングによって、前後だけでなく左右のトルクベクタリングをも可能にする。


従来の4WDはFF時の2WD状態でもプロペラシャフトは普通に回転しており、リアデフ手前の電子制御カップリングで後輪への駆動力の伝達をカットして燃費の向上を図っている。
とはいえ重く長いシャフトが常にエンジンパワーで回り、カップリングは多板クラッチなので解放状態でも多少の引きずり抵抗を排除できないらしい。
ところがトヨタはフロントにラチェット式の歯車で噛み合うドグクラッチを設けてプロペラシャフトを駆動系から完全に切り離せるようにした。
リアの左右のカップリングの締結も解放すれば後輪からの回転も伝わらず、シャフトはほぼほぼ回転しなさそう。
これによって、FF時の抵抗が大幅に減少するという。


ただ、ドグクラッチだとシンクロ機構無しの単純な歯車の噛み合わせになるので、加速時やスリップ時に瞬時に4WDになるのかがちょっと不安。
そこはリア左右のカップリングをまず締結すれば後輪の転がりが伝わり、プロペラシャフトは停止状態?から車速相応まで回転数が上がるため、それからなら回転数が合ってドグクラッチも滑らかに接続されそう。
シフトチェンジ時のブリッピングよりは単純そうなので、一連の作業はごく短時間で完了するか。
電子制御なのでスリップの予兆データから締結を開始すれば十分間に合う、ということのような気がする。




さて、それで肝心の燃費なのだが、通常どおりリアデフの直前に電子制御カップリングを1つだけ搭載したRAV4が15.2kmになっている。
ところが今回のダイナミックトルクベクタリングAWDはというと、なんと15.2kmに達する。
これは従来比0%の向上?で、市街地や郊外などの各モードで詳細に比べても最大で0.2kmという違いに過ぎず、もはや誤差レベル…。
どうしてこうなった?


ちなみにRAV4の2WDモデルの燃費は15.8kmで、実は4WDの15.2kmとほとんど同じになっている。
つまり、通常の電子制御カップリングでも十分な燃費向上効果が得られているということなのかもしれない。
それとRAV4は4WD性能をウリにしているため、発進や加速でも積極的に4WDにしており、プロペラシャフトを切り離す燃費効果が少し出にくいとも言える。


それなのにあえて複雑で高価な4WDシステムを採用した理由はなんだろうか。
それは高い走破性と旋回性だろう。
リアのトランスファーの左右にカップリングがあるため、後輪のトルクは左右で100:0まで自由に変更できる。
これによって滑りやすい路面でも曲がりやすく、スタックからの脱出でもトラクションのかかった側の後輪にトルクが集中できて脱出しやすくなりそう。
ブレーキLSDで内輪や空転している方の後輪にブレーキをかけるだけでも同様の効果は期待できると思うものの、トルクベクタリングを併用した方が動作量が大きい上にスムーズでスリップしなさそうだし、パワーがブレーキに逃げずにパワフルで、どちらもより効果的か。


燃費についても、効果なしと断じるのは早計かもしれない。
通常の4WDと比べ、新機構のモデルは実は最大で60kgも重いので、それなのに燃費が同じというのは既に向上した結果とも言える。
ハイブリッドのような劇的な効果はなくとも、60kgという大人1人分に近い重量増を打ち消して性能向上を果たしたのは立派な成果だろう。




RAV4は更にギヤ付きCVTも採用している。
負荷の大きい1速に歯車のギヤを採用することでダイレクトな発進と伝達効率の向上が可能になり、負担の減ったCVTはギヤ比を高速寄りにセッティングできるし変速スピードも速く設計できるという。
これにより、従来のCVTの高い油圧や滑りでのエネルギーロスや、ルーズな変速によるラバーバンドフィールなどが改善される。
既にレクサスUXに搭載されているものの、いよいよ量販モデルにも搭載されてきた。


RAV4は衝撃の260万円で登場したが、実はそのメカニズムにも驚きが詰まっている。
4WDとCVTの双方に技術革新をもたらしているのだ。
それを知るとなおさら価格に衝撃を覚える。

(注: ギヤ付CVTはガソリン全車だが、左右トルクベクタリングは314万円からのガソリンモデルに搭載。)



 
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RAV4に見るトヨタの本気

トヨタのRAV4の復活は、少し前に復活したライバルのホンダCR-Vと比べるとその本気度が違うような気がする。
RAV4の価格は2リッターガソリンが260~334万円、2.5リッターハイブリッドが320~381万円になっている。
これはCR-Vの1.5リッターターボの323~403万円、2リッターハイブリッドの378~436万円に比べるとそれぞれ60万円くらい安い。


CR-Vには純正ナビが標準装備になっているのでその分は割り引いて考える必要があるものの、それでもRAV4の方がかなりお安く見える。
それにナビは純正じゃない方が安かったり、スマホでも間に合ったりすることがあるので、人によっては標準装備じゃない方がありがたい。
そうするとやはりRAV4の方がお求めやすい気がする。
この価格だと、RAV4はミドルクラスSUVとしてフォレスターやCX-5とかとも互角に戦える。




というか、ホンダのCR-Vが値付けを間違えたのか。
当初から価格が少し強気すぎるのではないかと騒がれていたものの、アメリカでの直接のライバルであるRAV4が日本でも発売されたことでそれが露呈した形に。
思えばホンダの世界戦略車はジェイドにシビックにクラリティにインサイトなど、強気な価格設定が災いしてか日本での評判がかんばしくない。
どれも売れ筋ジャンルじゃないから力が入らなかっただけかと思ったら、CR-Vは日本でも人気のSUVなのでちょっと残念。
それでもRAV4が300万円とかからならまだ目立たなかったものの、260万円からという戦略価格で登場してしまってはCR-Vの立つ瀬がない。


デザイン的にもRAV4の方が直線基調でシャープに見えて好感が持てる。
特にリアビューとかカッコいい。
CR-Vはちょっとバタ臭いか。




一方、トヨタのSUVと言えば既にC-HRがあるものの、実は最低地上高が4WDでも15.5cmしかなく、ハイブリッドにいたっては2WDのみと悪路走破性に期待はできない。
RAV4は最大で20.0cmまで確保しており、ラインナップは4WD中心。
ハイブリッドも54馬力のリヤモーターを用いた4WDで、全般的にオフロード性を重視している。


C-HRはクロスオーバーとも呼びにくいファッションSUVに過ぎなかったが、RAV4は非常に真面目にSUVしていてアウトドアや雪道での積極的な使用に耐える。
高いオフロード性能とC-HRとも競合しかねない低い価格設定で、C-HRではガチなコンパクトSUV需要に応えられないという弱点をカバーしている。
ホンダが200万円台のヴェゼルに過剰に遠慮して?、CR-Vを323万円からにしてしまったのとは対照的。




RAV4もCR-Vもかつては日本で人気の「RV」だったものの、いつしか大きく高価になって日本市場から去ってしまった。
その両車が数年ぶりに揃い踏みで復活したわけなのだが、その価格戦略は真逆なものになった。
リーズナブルな価格のRAV4と、オプション満載で高級路線なCR-V。
かつての消滅理由を思えば割高とも一部で指摘されるCR-Vの分が悪いような気もするものの、CR-Vには最近話題の3列シート仕様がある。
ただ、3列シートSUVには1クラス上のサイズでより3列目が快適そうなマツダのCX-8がCR-Vと同じ価格帯で存在する。
久々の対決は果たしてどちらに軍配が上がるだろうか。



 

ハイブリッド特許の無償開放という賭け

トヨタがハイブリッド技術の特許を無償開放するという。
スズキへの提供を決めたことといい、どうやらハイブリッド技術の積極展開を進める模様。


本格ハイブリッドの開発は技術やコストのハードルが高い。
長らくトヨタしか開発できず、ホンダはここ数年でようやく2モーター式を投入してきた。
日産はEVのシステムに発電用エンジンを組み合わせたものの、エンジンを直接走行には使わないのでEV用の高コストな超強力モーターや高速巡行時の効率に課題を残している。


一方、ヨーロッパで人気なディーゼルは排ガス偽装で逆風が吹き、一斉にEVへ舵を切られることになった。
その間は48Vバッテリーでオルタネーターを積極利用するマイルドハイブリッドで乗り切るつもりか。
確かに速度無制限のアウトバーンや国をまたぐ長距離巡行では本格ハイブリッドの長所は生かせない。
アメリカはガソリンが安いし、国土が広く渋滞が少ないのでやはり生かしにくい。
本格ハイブリッドはガラパゴスな技術として世界的にはスルーされ、一気にEV時代へと突入しそうな状況に見えなくもない。


このまま座して死を待つよりは特許を開放してでも本格ハイブリッドの普及を図り、ユニットや部品を手広く外販した方がマシなのかもしれない。
そうすればEV化の流れを緩やかにできるし、モーターやバッテリーの制御やインバーターとかの技術は来るべきEV時代に生かせて無駄にはならない。
特許が無償解放されても製造ノウハウや制御には高い技術力と長年の積み重ねが必要とされるだろうし、生産設備の追加投資も必要なので、特許料の分だけ安くなったトヨタの部品や制御ユニットを部分購入して自社の車に組み込むメーカーも多そう。
それに本格ハイブリッド車同士の争いになれば、トヨタはプリウスのブランドや一日の長を生かしやすい。




ハイブリッド技術は主に都市部のストップアンドゴーで威力を発揮する。
一方のディーゼルはハイブリッドが苦手な高速巡行が得意なものの、排ガス偽装とその規制強化によるコストアップで大型車以外は今後は搭載が難しいか。
そして欧米でも都市部に人は多いわけで、全員がしょっちゅう国をまたいで移動しているわけでもない。
東アジアだと渋滞はもはや名物になっているし、特に中国は膨大な車を短期間で全てEV化するのは現実的とはいえない。


そんな中で本格ハイブリッドの開発ハードルが下がれば、世界で普及する可能性はある。
EVだって今現在は高価で航続距離が限られ、充電時間が長く、銅やレアメタルの消費が桁違いに大きく、発電所が石炭火力だと二酸化炭素が減らないという問題がある。
マイルドハイブリッドはマイルド過ぎて燃費の向上幅が非常に限られるのはホンダやスズキのハイブリッドで見てきた通りで、EVへの繋ぎとしては相当に力不足か。
メーカーに課せられた燃費規制をクリアするには、EVとマイルドハイブリッドの組み合わせだけでは心もとない。
なので本格ハイブリッドやその延長線上のPHEVが、今後20年くらいは最適解であり続けるのではなかろうか。


そんなわけで、トヨタの特許開放はEV一辺倒な流れを変える可能性がある。
当面の現実的な解答として本格ハイブリッドが普及すればトヨタはサプライヤーとして儲けることができ、車の販売競争でも優位が期待され、EVが普及してもハイブリッドを支えるモーターやバッテリーの制御技術や搭載・設計ノウハウが生かせて十分対応可能だ。




てな感じにトヨタがいよいよハイブリッドで世界の覇権を握るのかと思いきや、不安がないわけでもない。
ヨーロッパは既にEVへと政治が動いており、アメリカは安価な自国のシェールガスの石油を背景にビッグ3に不利な環境規制を無かったことにしようとしていたりする。
これがもしディーゼル偽装が発覚した直後の無償解放だったら非常にタイムリーで時代がトヨタへ追随した可能性も高かったのだが、EVや48Vマイルドハイブリッドや2040年までのガソリン車の禁止とか、欧州の方針が固まってからだと時機を逸した感も否めない。
更にはトヨタは燃料電池車でも特許の無償開放を行っているが、なかなか広がる気配がなくて一筋縄ではいかない。


プリウスで華々しくデビューし、一時期はハリウッドセレブ御用達だったハイブリッド車も、今ではガラパゴス化の懸念が尽きない。
特許の無償開放というのは追い詰められたトヨタの窮余の策であり、断末魔の叫びであるかもしれないのだ。
それともこれまで培ってきた技術とノウハウで満を持して放つ必勝の策であり、大器晩成となるのか。


特許開放が、豊臣家が滅亡した大坂の陣での外堀内堀の喪失になるか、小山評定で陣営作りに成功して徳川の勝利を決定づけた関ケ原になるかは、トヨタからの今回の書状に対する各メーカーの反応に掛かっている。



三菱eKクロスはデリカに実は似てない?

三菱の軽自動車eKワゴンがフルモデルチェンジされ、クロスオーバーな「eKクロス」というモデルが登場した。
デザインはこないだビッグマイナーチェンジを果たしたデリカD:5にそっくりでかなりアグレッシブ。
デリカも最初はギョッとしたものの、慣れてくるとオラオラなだけでなく、SUVのたくましさも感じさせてなかなかいいのではなかろうか。
柄の悪さをあまり感じさせないところが他のカスタム系より好感度が高い。


エンジンはルノー日産肝いりの新開発で、CVTもジャトコが軽専用に簡素化した新設計。
副変速機の省略によるレシカバ(変速比のカバー範囲)の縮小や許容トルクの低下で安価なだけでなく、ステップATな制御も取り入れて自然なフィールを出しているという。
小型リチウムイオンバッテリーの搭載でオルタネーターを走行や回生発電に積極利用するマイルドハイブリッドも搭載してスズキと肩を並べる。
かなり力の入ったモデルチェンジで、これは期待が持てるのではなかろうか。




とはいえ、気になるところがなくもない。
それは15.5cmという最低地上高。
デザインはデリカにそっくりで、銀色のバンパーガードやホイールアーチの黒いモールでSUV感を演出しているのに、最低地上高はノーマルのeKワゴンと変わっていないのである。
これだと悪路走破性は普通なままだ。


デリカの最大の特徴はミニバンでありながらラリーにも参加するほどの本格的なSUV性能を備えていることにあり、それを支えているのは18.5cmという最低地上高にある。
いくら高度な4WD機構があろうとも、最低地上高が低ければ道のデコボコや雪でスタックして性能を発揮できない。


eKクロスはビスカスカップリングで、スリップしないと後輪が駆動しないのはハスラーとかとも同じで、簡易な4WDシステムになっている。
普通車のSUVに多い電子制御カップリングならスリップの予兆データから事前に自動で4WDになったり、任意に前後輪をロックしたりできるものの、コストの関係からかそれを搭載する軽は記憶の限りでは存在しない。
そしてジムニーだとギアで直結する本格クロカンでガチ過ぎ、低ミューな未舗装路や雪道でないと四駆にしにくい。
なのでビスカスは仕方ないのだが、せめて最低地上高だけはハスラーの17.5cm以上を確保して欲しかった。
そうしないとSUVミニバンなデリカを真似た意味がなく、画竜点睛を欠く感じが否めない。


三菱はパジェロに代表されるようにSUVに強く、最近ではますますSUVに注力している。
軽でも昔はパジェロミニがあり、ジムニーほどではないもののビルトインラダーフレームに後輪リジッドサスや副変速機など、かなり本格的な4WD性能でジムニーと双璧をなしていた。
開発コストの高騰や燃費重視な昨今、今の三菱がもう一度パジェロミニを作るのはほぼ不可能だと分かってはいるが、ハスラーがワゴンRのコンポーネンツを利用しつつも、最低地上高を引き上げて雪道や未舗装路に対応したのと同じことはできるはず。


更に言えば、電子制御カップリングを搭載してデリカやランエボ譲りの4WD制御技術を見せつけて欲しかった。
そうすればパッシブ制御なビスカスとは一線を画す性能を発揮して、文字通りのフルタイム4WDすら可能になる。
舗装路に限れば、直結でカーブが苦手で手動切り替えという弱点を抱えるジムニーよりも、多くの場面や速度域で柔軟に4WD性能を発揮しそう。




eKクロスはデザインはデリカそっくりなのだが、デリカ最大の特徴であるSUV性能を捨て去ったのがちょっと残念。
これがスズキのスペーシアギアなら、同じくカッコだけのSUVとはいえそこまで気にならない。
SUVが欲しければスズキには本格派のジムニーも現代的なハスラーもあるからだ。
そこになんちゃってSUVなスペーシアギアが加わったところで、むしろファッションSUVとしてラインナップの補完にすら思える。


ところが今の三菱にパジェロミニはない。
ハスラーのような軽もない。
それなのに満を持して登場したデリカ似のeKクロスがなんちゃってSUVでは少し物足りない。
燃費偽装の次はSUVなのかと、なんだか残念な感じが漂う。


これがもし18cm程度の最低地上高と、電子制御カップリングの4WDシステムで登場してくれていたら、SUVに注力する三菱にふさわしい軽になったはず。
そうすればデリカと同じく根強いファンに支えられる、独自のヒット商品になった気がする。
大人気なハスラーを性能で超えるライバルとして、かなり健闘するのではなかろうか。
でもまあ、日産でもデイズとして併売するから今更そんなコストのかかる面倒な開発はしなくてもいいのかなあ。




とはいえ、4割超の国内シェアを占める軽で、SUVの基本である最低地上高を手当てしたのがジムニーとハスラーとダイハツ・キャストだけという現状はどうなんだろうか。
そのハスラーやキャストもビスカス式で、4WD性能の方はいささか心もとない。
今や軽もファーストカー需要が多くてそんなにお安くないし、SUVは人気ジャンルで、雪道での走行安定性とかも考えると、ジムニーほどではなくても、もう少し普通車並なSUV性能を有する軽があってもいいような気がしないでもない。




トヨタ協業にみるスズキのハイブリッドの行方

スズキがトヨタからハイブリッド技術やハイブリッド車の提供を受けるという。
トヨタからのハイブリッド技術の提供というとマツダのアクセラが記憶に新しい。
あれはエンジンはマツダ製なものの、その他の機構はトヨタのTHSというシステムそのままで独自性が薄かった。
マツダは独自のクリーンディーゼルをハッチバックに搭載し、ハイブリッドの方はコンサバで人気の薄いセダンに搭載するという差別化を図ったのもよくなかったか。
それでも燃費最優先なラバーバンドフィールを抑えた制御だとか、プリウスにないセダン形状でニッチな健闘が期待されたのだが、結局次第にフェードアウトして次期型に切り替わることなく消滅してしまった。


スズキがTHSの提供を受ける場合、やはりマツダと同じくシステムはそのままでエンジンだけ出力特性を合わせた自社製という可能性が高い。
THSは絶妙なパワーバランスと複雑な制御で成り立つため、そうしないとうまく導入できそうにない。
ところがそうすると差別化が難しく、マツダと同じく売上に貢献するかが怪しくなる。
スズキがいくら軽で磨き上げた安価な価格戦略を取ろうとも、THSにトヨタの利益が乗るという不利で相殺されて同等までがせいぜいか。


となるとあとはスタイリングや使い勝手で勝負ということになる。
トヨタのC-HRなどは街中重視でオフロード使用はあまり考慮されていなかったりするので、より四角い形で最低地上高も高いエスクードに積んで雪道やアウトドア需要を喚起して対抗するか。
スイフトも少し最低地上高を上げた真面目なクロスオーバーや4WD、ヨーロッパ仕様の足を採用したモデルなどを積極的に打ち出してニッチな需要を捕まえにいく必要がありそう。




それよりも気になるのは、スズキの従来のハイブリッドシステムがどうなるか。
オルタネーター機能を統合したモーターや追加の小型バッテリーで走行アシストと回生発電の強化を図ったマイルドハイブリッドの方は、これまでどおり独自開発を進めると思う。
開発のための技術やコストのハードルが低く、インドとかの新興国でも普及の可能性があるので独自開発の価値がある。


問題は5速マニュアルを自動化した5速AGSに専用の走行用モーターと大容量バッテリーとを組み合わせたハイブリッドの方。
スズキは「マイルド」ではない本格的な「ハイブリッド」と称してはいるものの、走行用モーターのパワーは13.6馬力・トルク3.1kgに過ぎず、61馬力・トルク17.2kgなアクアと比べると実に5分の1。
これだとオルタネーターと大して変わらず、モーター走行や回生発電の能力が非常に限られることを思うと実質的にはマイルドハイブリッドに留まるか。


5速MTベースでミッションが非常に安価で効率が高いことは長所なのだが、低いモーターパワーがボトルネックになってハイブリッドのメリットを引き出しにくい。
せめて一昔前のハイブリッドである30馬力程度は欲しいところで、そうでないとわざわざ走行用モーターを別に積む必要性が薄い。


ところが同じくマイルドハイブリッドな性格を持つフォレスターのeボクサーもモーターパワーは13.6馬力・トルク6.6kgと馬力がやはり低い。
両車ともに燃費の向上が16%程度に留まり、100Vほどのバッテリー電圧ではこの程度が運用の限界なのかもしれない。
61馬力のアクアなんかは、プリウスより簡素化されたとはいえ144Vバッテリーが520Vまで昇圧されてパワフル。
ただそのためには高性能なパワー半導体とか高電圧仕様のケーブルとか、性能と安全対策でコストが全般的に跳ね上がりそうで、トヨタの規模と長年の継続がないと低コストに量産するのは難しいか。


昨今はヨーロッパが48Vバッテリー、マツダが24Vバッテリーによるマイルドハイブリッドを提唱しており、オルタネーターを以前よりは走行に投入できるようになってきた。
こうなるとスズキの5速AGSなハイブリッドは厳しくなってくる。
むしろ同じようなパワーの走行用モーターを別に搭載するだけ高コストか。
60馬力とかの本格ハイブリッドはトヨタからの供与があり、既存バッテリーの電圧強化で100Vの優位はその差が大きく縮まろうとしている。




とはいえ、5速AGSはやはり捨てがたい。
5速MTベースなので軽量安価で高効率で信頼性が高く、マニュアルの多い欧州との親和性も高い。
マイルドハイブリッドがあれば、変速でもたつく空走感や低速時のギクシャクもモーターアシストで解消されるし、発進をモーターに完全に任せれば実質的な6速化も可能だ。
最終減速ギアの所に走行用モーターが付くからオルタネーター式と違ってエンジンをクラッチで切り離せ、モーター走行や回生発電時に効率を高めやすいし、ギア接続で強力なモーターも運用できる。
本格ハイブリッドよりはモーターやバッテリーの性能を低く抑えられ、昇圧機構も無いのでそれなりに安価。
既存の車にポン付けする単純な形であり、開発生産コストも抑えられる。


なので、フィットハイブリッドと同じ170V程度までバッテリーを強化すれば優位を確保できるかもしれない。
そうすればフィットと同じ29.5馬力・トルク16.3kgといった30馬力級のモーターが扱え、ハイブリッドのメリットを引き出しやすい。
今のシステムの、構成は本格的なのに性能はちょっと残念、な状態からおさらばできる。
200V以下なら高電圧扱いされることもなく、48Vほどではなくてもコストもそこそこ抑えられそう。


独自技術で差別化ができ、トヨタも含めたライバルに対抗する貴重な手札になり、新興国へも昇圧装置が無く既存車との共通性も高くて展開しやすい。
インドや東欧に生産拠点を持つスズキには、ぜひ5速AGSなマイルドハイブリッドをこれからも独自に推進して欲しい。
軽量安価でそこそこ高効率な5速AGSハイブリッドは、実にスズキらしい小型車用のシステムではなかろうか。




まあ、今のかなりマイルドな5速AGSハイブリッドでも実はノーマル車より30万円ちょっと高く、価格の方はちっともマイルドじゃないというか、立派に本格的だったりするのは内緒だ。
これで30馬力級のモーターを搭載してバッテリーを強化すると、アクアとかを価格の面では完全に超えそうな勢い。
性能的にはそれでもエンジン走行中心でまだマイルドなのに…。


そんなところも自社システムの特徴を未だ引き出し切れてないと言えそう。
5速AGSハイブリッドの長所は枯れたミッションや普通車にポン付けのシステム構成で安価な割には高効率なところにあるはずで、本格ハイブリッドの看板を強引に掲げて互角の価格勝負を挑むのは少し違っている気がする。
非力な潜水艦を通商破壊に用いずに強力な敵戦闘艦の撃沈を主目的とするのでは、大した戦果を上げられないまま無残に壊滅した帝国海軍の潜水艦隊と同じ道を歩むことになるのではなかろうか。


お手本とするのは衝撃の低価格であのトヨタを震え上がらせ、なりふり構わない総力戦へと引きずり込んでみせたホンダの2代目インサイトの気がする。
性能はそこそこでも低価格で敵の補給線をじわじわと締め上げて消耗させることこそが、マイルドハイブリッドの真骨頂なのである。
そして今ならスズキは5速AGSという、潜水艦の隠密性を更に高めたシュノーケルにも似た装置を搭載し、低価格性に磨きをかけられる。
トヨタが旧型との併売やブランド戦略を無視した価格引き下げに動いたとしても、今度は持ちこたえられる。


なので次期型は性能向上とともに、価格の方もぜひマイルドにして欲しいなあと。
そうすれば価格志向の強い小型車市場のニーズともマッチして、トヨタの裏庭を荒らす縦横無尽の通商破壊戦を展開してくれそうな気がする。




 

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