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2019-04

S660がもしも軽じゃなかったら

初代NSXと同じエンジン横置きなミドシップレイアウトという専用のプラットフォームを持つS660なのだが、今更ながら軽であるために随分と損をしているのではないかと感じる。


ミドシップというスポーツパッケージにもかかわらず、64馬力の自主規制があるためパワーウェイトレシオが13.0まで悪化し、1.3リッターなノーマルフィットの10ちょいと比べてすらかなり劣る数値になっている。
仮にCPUチューンを施してケーターハムのように80馬力にアップしたところで、ようやく10.3でノーマルフィットに並ぶ程度。
これは軽の排気量が660ccに抑えられている限りどうしようもなく、せっかくの高価な専用プラットフォームがもったいない気がする。


輸出も面倒だ。
軽は日本独自の規格なため、あのジムニーも輸出仕様はエンジンを1.3リッターに積み換えフェンダーを拡幅してワイドタイヤを履くという改造を余儀なくされている。
S660だとエンジンをフリード用に開発中だったと伝えられる1リッターターボに換装すれば、スポーツカーにふさわしいパワーを得られる。
仮に120馬力で車重は1割近く重い900kgだとしたら、7.5までパワーウェイトレシオは向上する。


ところが、S660はエンジンが横置きなことがネックになる。
ジムニーはエンジン縦置きなので左右のタイヤハウスともさほど干渉せず、ミッションも室内にめりこんでいるなど大型エンジンや大容量ミッションに積み換える余裕がある。
S660はエンジン横置きなので、エンジンとミッションとタイヤが軽の狭い全幅の中で横一直線に並んでおり、2倍のパワーのエンジンとそれを受け止めるミッションや冷却系を果たして搭載できるのかという疑問が生じる。
後輪ならハンドルを切る必要がないのでその分の余裕をエンジンルームにあてられるものの、前に車雑誌でやはりボディ自体を拡幅しないとエンジン換装は無理との記載を見かけたこともある。


室内の狭さも輸出ではネックか。
ボディが軽のままだと外人には狭苦しそうで、全長392cm全幅174cmのロードスターに居住性や体格の許容度でかなわないことが想像にかたくない。
ジムニーはアップライトな姿勢で背の高いクロカンなため、そういった面ではまだ救われているだろうか。


外観も、軽でなければサイズに余裕が出て、よりワイドアンドローでグラマラスな雰囲気にできる。
今のS660はショーモデルに比べるとやや寸詰まりで窮屈そうな気がしないでもない。


実用性はかなり低い。
トランクルームは実質的に存在しない。
2人乗ると旅行どころか近所の買い物すら荷物置き場に苦労しそうだ。




パワー不足・輸出困難・低い実用性といった問題の大部分は軽規格なことに起因するため、S660は軽じゃなくてS1000というコンパクトカーとして最初から作っておいた方が良かったのかもしれない。
軽は税金の優遇が縮小されて逆風な上、常に存在の妥当性が問題になるという危うさがあり、スズキも近年は普通車に力を入れざるを得ない状況にある。
それにミドシップスポーツなら経済性より趣味性が上回り、コンパクトカーだったとしてもあまり売れ行きに影響しないと思われ輸出を考えればお釣りがくる。


もし軽じゃないとすると、ロードスターより1ランク小さくAセグメントにおさまる?全長370cm全幅165cmほどがいいだろうか。
これなら色々とバランス良く向上して競争力が高まりそうだ。
全長のアップが30cmくらいだと、フロントのルーフ置き場兼用なトランクスペースの拡大は10cmくらいに過ぎないかもしれないが、幅は15cmほどの拡大が見込めるのでルーフを収納しないなら割と物を置けるようになり、荷物が全く乗らないという理由で断念するユーザーを多少なりとも減らせるか。


価格は今や軽も小型車もほとんど同じで、エンジン型式だって同じ直3ターボ、フィットRSを前後ひっくり返した構成と考えればフィットの部品とかもある程度使用できそうで、原価的には今とさほど変わらないか。
6速ミッションなんかは新規開発ではなくフィットRSのをそのまま流用できたり、輸出による量産メリットが生かせればむしろ下がる可能性すらあるものの、軽とは違い直噴になるので高圧インジェクションが必要なのと、増える車重の分だけ原材料費がかさむと思えばトントンかもしれない。


パワーが向上しミドシップとくればスポーツ性は折り紙付きなので、タイプRも作れそうだ。
シビックタイプRが高過ぎたので、300万円以下で出れば現実感がある。




といった感じに、S660は最初からコンパクトカーとして開発すべきだった気がしないでもない。
あのトヨタですら小型FRの開発に苦労しマツダはフィアットとの提携を選択する中、よりマニアックなミドシップカーがほぼ国内限定の軽規格というのは何というかもったいない。


にもかかわらず軽になってしまったのは、今や伝説となったビートの呪縛だろうか。
しかしそのビートも、発売がバブル崩壊後になったのと輸出が難しかったせいか商業的には必ずしも成功とは言い難く、初代だけでその系譜は途絶えてしまった。
初代ロードスターの世界的大ヒットとはまさに対照的で、そこから得られる戦訓としてはやはりガラパゴスな軽規格だったことが敗因ではなかろうか。


その戦訓を生かしてボディの拡幅で輸出したとしても、実質的にはシャシーもパワートレインも刷新するフルモデルチェンジに近いため、開発費や部品の共用率の低下で多額の追加コストが発生して、元から怪しいスポーツカーの採算性が更に悪化し非効率だ。
デザイン性や居住性、実用性の改善も軽からの後付けの拡幅では効果が限定的となる。
それくらいなら最初からコンパクトカーとして設計した方が性能も採算も大幅に向上するだろう。




とはいえS660は既に軽として発売されてしまっている。
これをどうすべきかと考えるに、660ccエンジンのままハイオク化し、過給圧を上げて100馬力くらいまでパワーアップすればいいのかもしれない。
タイヤは既にリアにコンパクトカー並みの太さの奴を履いているので、そのままでも大丈夫か。
これなら安価に輸出仕様が出来上がりそうなのだが、やはり元が軽なので価格以外のあらゆる面でロードスター相手に苦しそうだ。


まあ、過去にはMR-2というミドシップスポーツをオープン化したMR-Sでトヨタがロードスターに勝負を挑み、敗れてMRブランド自体が消滅したという苦い事例もある。
もしかしたらそっちの方の戦訓を重視してロードスターとの競合をあえて避け、ライフで低迷したホンダの軽のテコ入れがS660なのかもしれない。
ダイハツのコペンのように熟練工が手作業で組み上げるセル生産方式なら、ベルトコンベヤーのようなライン設備が不要で設備負担がかなり軽いため、比較的安価に少量生産が可能で失敗した時の損失も少ない。


しかしそこは世界のホンダとして、最初からS1000で量産ラインを構築し、ロードスターに真っ向勝負を挑んでほしかった気もする。
ロードスターが250万円からとかなり高価になってしまった今、付け入るスキは十分にあった。
S660との二重投資がなく、量産メリットも生かして今の200万円の価格でもし発売できていれば、小型軽量で何より安価だった初代ロードスターの再来としてライバルのお株を奪うヒットが見込めたかもしれない。
仮に10%アップの220万円からでも十分な競争力を持つだろう。


ロードスターと同じくらい高い価格でやや期待外れに終わった86のシェアだって奪え、トヨタが開発中の小型FRにも対抗できる。
コペン・ロードスター・86・小型FR、そしてついでにポルシェ・ボクスターに憧れるユーザーをも1台で相手に出来るとなれば、ホンダのスポーツカーとして、その存在力はある意味NSXすらしのぐだろう。




S1000の話は時折雑誌で見掛けるものの、もしS660がS1000として企画されていたなら今頃世界中で大ヒットしていたかもしれないなあと、ふと夢想する。
国内の鉄道事情に縛られた74式が、同じ第二世代のエイブラムスやメルカバみたいな120mmへの換装もかなわず、C4Iや増加装甲といった大規模な近代化改修がほどこされることすらなく、ひっそりと10式に道をゆずって引退していく姿が思い出されるのはたぶん気のせい…。



 
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