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2019-01

3列目はヴァイタルパートに含まれない…だと!?

マツダのCX-8の売れ行きが好調らしい。
実用的な3列目シートを備えるSUVというコンセプトが市場に受け入れられたということだろうか。
SUVブームな中、ミニバン的にも使えるスポーティーな車となれば人気になるのもうなずける。
走りを半ば諦め、ギラギラとしたデザインがもてはやされる既存のミニバンを選ぶのに抵抗感を覚えるというユーザーにも突き刺さることだろう。


そんな独自のキャラクターを持つCX-8だが、実はもう一つ独自ポイントがある。
それは3列目シートの安全性。
CX-8は、なんと追突事故でも3列目シートの安全性を確保したという。


3列目シートの安全性については今のところ安全規定がないらしい。
50kmの追突事故で燃料漏れを起こさないようにということだけが決まっているそうな。
これだと、極論すれば3列目シートはクラッシャブルゾーンにして構わないということになってしまう。
燃料タンクは通常2列目シートの下にあるので、それでも燃料漏れは起こさないしその上にある2列目の生存空間は確保される。


ところが、マツダは80kmのオフセットな追突でも3列目の生存空間を確保したという。
現状、ここまでやっていることを公表しているのはボルボくらいらしい。


通常3列目シートはどうしても狭く、小柄な女性や秘密基地とかを好む子供が座ることが多いのではなかろうか。
家族が3列目を利用するからミニバンを選択したのに、実はそれが奥さんや子供を大きな危険にさらす可能性がある。
5人で乗る場合も、ミニバン以外なら多少窮屈でも2列で座るしかないのだが、ミニバンだと1人は危険な3列目に追いやられて無駄に命を散らしかねない。


現状、3列目の安全性にも配慮した車を一般ユーザーが選ぼうとすればCX-8しかほぼ選択肢はない。
ボルボは価格やディーラー網の関係でなかなか選びにくいし、プラドなどは高価な本格クロカンだからだ。
CX-8は、ミニバンに一歩譲る使い勝手や快適性を安全性という独自の武器でカバーしたといえる。




デメリットとしては、開発生産コストの増加と重量増だろうか。
頑丈にしたり衝撃の吸収分散機構を入れたり衝突試験をしたりすればそれは免れない。
価格と燃費はユーザーの重要関心事なので、その両方が悪化するのは非常に痛い。


それでも車の安全性は、過去にも衝突安全ボディやエアバッグ、ABS、自動ブレーキなど、その度にコストと重量の増加をしのんで強化してきたという歴史がある。
側面衝突でドアビームが入っていなかったりピラーレスなどで大きくひしゃげるボディは、昭和の交通戦争の1コマとしてテレビのドキュメンタリーなどで大きく取り上げられたものだが、実はそれと似たことが平成の世の最新ミニバンで起こりうるというのはある種の盲点か。




もちろん、完璧な全周防御というのは難しい。
過酷な戦場で運用される戦車ですら、複合装甲は前面にしか採用していない。
側面は中空装甲などで妥協し、後方や上方は意外に脆弱だ。
なので主に正面からぶつかることを想定する野戦はともかくとして、敵味方の入り乱れる市街地戦などでは歩兵の携帯ロケットで簡単に撃破されてしまうことがある。
限られた重量配分の中で戦車戦に耐えうる装甲を施そうとするとどうしてもそうなってしまうのだ。


車でも同じことが言える。
装甲車のような作りにすれば、重機関銃はともかく衝突程度なら全周防御も可能かもしれないが、それでは価格も燃費も手が出ないほど悪化する。
そのため、まずは脅威度の高い前方と側面の衝突に限定して備えるのは致し方ない。


ただ、車は主に市街地で運用され、後方からもほぼ常に他の車に狙われている。
相対的にリスクが低いとはいえ、決して無視できるほど安穏とした状況ではない。
それでも3列目さえ無ければ燃料タンクを防御する程度で良かったかもしれないが、ミニバンでは子供が座る可能性の高い3列目がそのための盾として使い捨てられかねない。
セダンが主流の時代ならいざ知らず、ここ20年の車の変化に規制が追い付いていない格好だ。




CX-8は、3列目シートの安全性という盲点に現実的な価格や燃費で対処可能であることを証明して見せた。
このことの意義は小さくないように思える。
少なくともアルファードやエルグランドといった大型ミニバンは、サイズ的にも価格的にも積極的な対応をすべきだろう。
ミニバンのボリュームゾーンであるステップワゴン級にも対応が求められる。
3列目の使用頻度が高く、多人数乗車での高速利用も想定されるからだ。
それに5ナンバーとはいえ全長は長いし、価格的にも300万円近いのでCX-8と同レベルの安全性の確保が可能だろう。
厳しい三国時代なステップ・セレナ・ノアの争いの中で、3列目の安全性は有効な武器にもなりそうだ。


難しいのはシエンタやフリードといったミニミニバンか。
こちらは小さなサイズと安価がウリなので対応が厳しい。
まあ、ミニミニバンは3列目の運用も限定的で短距離の下道が多そうなので、あくまで非常用という位置づけで問題を棚上げするしかないのかもしれない。




全周警戒が必要な市街地戦において、3列目シートは相対的にかなり無防備な状態に置かれている。
守るべきヴァイタルパート(重要区画)の中に規則的には勘定されておらず、たとえ砲弾が直撃して吹き飛んだとしても大きな支障のない部分として半ば放置されかねない状況にある。


最近では自動ブレーキというアクティブディフェンスも搭載されてきてはいるが、特に危険な夜間や雨に雪でもセンサーが十全に機能するとは限らないし、なにより搭載は相手の車頼みである。
己を過信して危険運転しやすい人が、10万円も余分に払って搭載するほど意識が高い人たちばかりとは限らない。
それに搭載によってブレーキ性能が向上するわけではないので、機能したとしても衝突自体は避けられなかったり、雨や雪道では十分に速度を殺せないこともあるだろう。
その際に、今のままではクラッシャブルゾーンとして大きくひしゃげ、死なないまでも重傷を負う可能性を無視できない。
つまり完全な自動運転というイージスの盾が完成し配備されるまでは、自身の装甲に頼るパッシブディフェンスを固めておく必要があるのだ。
そうでなければレーダーの死角や薄い装甲をエグゾセに狙われ、シェフィールドのように一発で致命傷を負いかねない。




CX-8は、安全性が非常に重視される社会の流れの中で、その安全への感度が特に高いはずの家族ユーザーがより危険な車に好んで乗るという社会の矛盾を見事に突いて見せた。
このことはなんとなれば子供の命に直結するため、少々ガス代がかさむだけの燃費偽装などより実は重大な社会問題といえる。


とはいえ、今のところこの問題は大きな騒動にはなっていない。
マツダにしても、国の基準という免罪符が3列目には無い中で自社の独自基準をクリアしたに過ぎないため、販促のために安全性を強調し他社のねたみを買った上で死亡事故でも起こそうものなら、燃費偽装どころではない社会問題になって会社が潰れかねない。
たとえ事故の状況からやむを得ない死亡だとしても、そんなものは偏向報道でどうにでもできるのはトヨタのアクセル問題を取り上げるまでもない。
トヨタ・日産・ホンダの尾をマツダもマスコミも踏むわけにはいかないため、3列目の安全性というパンドラの箱には今後もそっとフタがされるのでなかろうか。


団塊世代の高齢化などによって追突死亡事故が相次ぐなどの戦局悪化が起こらない限り、零戦の操縦士席の後ろに防弾板が設置されることはないのだ。
防御をかえりみない極限までの軽量化によって運動性と攻撃力と長大な航続距離を確保するのが、非力なエンジンで短期決戦を挑むしかない脆弱な国力という枷に縛られた日本の宿命なのである。
それは石油や工業資源を持たずバブル崩壊後のデフレにあえぐ今も、ともすれば燃費とコストが安全性に優越しがちな姿勢として変わらない。
それゆえに攻撃こそ最大の防御と強弁し、相手をいかに早くロックオンすべく機動するか(センサーで感知して自動ブレーキを掛けるか)に今後とも注力するのではないだろうかー。



 
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